世界で最も蔓延している感染症は「歯周病」である。だが、世の中には歯周病とは比べものにならないくらい甚大な被害をもたらした感染症が存在している。では、これまでの人類の歴史の中でどんな感染症があったのか?
過去を振り返ると感染症はこれまでに人類に大きな影響を与えてきた事がわかる。今回は、そんな世界で猛威を振るった感染症をいくつかご紹介いたします。それではさっそく見て行きましょう。
最古の感染症と歴史
※画像引用元はコチラ(古代アテネ)
人類最古の文明であるシュメール文明やメソポタミア文明時代から感染症らしきものが流行していたとされているが、この辺りは考古学的にも観測圏を超えている為、本当に感染症が流行していたかは不明とされている。ただ、この時代の神話やおとぎ話に感染症らしきものが登場している事から、少なくとも感染症は文明の誕生時には既に存在していたと考えられている。
実際、メソポタミアのギルガメッシュ叙事詩(最も古い小説のようなもの)には疫病が四災厄の一つに数えられている。また、エジプト文明やインダス文明でもこのような感染症に関する考古資料が確認されている。つまり、感染症は人類の歴史と共に世界中で確認されていたという事になる。
そんな感染症だが、世界史上に始めて記録されたのが紀元前400年頃の古代ギリシャで確認された感染症となる。古代ギリシャの都市国家アテナイ(現アテネ)で確認された事から、この感染症は「アテナイの疫病」と呼ばれている。この感染症によってアテナイの人口の4分の1~2が死亡。当時は甚大な被害をもたらしたとされているが、現在ではこれは天然痘、もしくは麻疹だったのではないかと考えられているという。
繰り返される感染症の歴史
これらの感染症の流行は、人口増加や人の移動が大きく影響していると考えられている。当時は感染症への対策法や治療法が確立されていない為、都市化などが進むに連れ感染症の拡大速度も飛躍的に大きくなっていたというのだ。
実際、ローマ帝国が全盛期だった西暦100年頃~300年頃にも感染症が流行し始めた。このローマでの感染症に感染すると「黒い便」や「全身に赤い斑点」などの症状が現れていたという。この感染症による死亡率は高く、当時のローマでは総死者数が1000万人を超え、一日の死者数は約5000人を超えていたと言われている。
この感染症が蔓延した要因は、当時の衛生環境だと言われている。栄華を極め都市化が進んでいたローマだが、その衛生状況は最悪だった。当時のローマでは下水道がほとんど機能していなかった言われており、排泄物などが平気で道端に捨てられていたという。もちろん殺菌などは行われていなかった。
これに加えて、当時のローマではグローバル化が進んでいた。他国との交易が頻繁に行われていた為、このような未知のウイルスが蔓延しても可笑しくはなかったのだ。結局、これほどの死者を出した「疫病」だが、これがどういった病気だったのかは現在でもわかっていない。※一説では「天然痘」だと言われている。
人類史上最大の感染症「ペスト」(黒死病)
※画像引用元はコチラ(ペスト)
ローマで疫病が蔓延してから数百年後の西暦500年頃~800年頃、ローマでは新たな感染症が流行していた。それが人類史上最悪の感染症と言われるペスト(黒死病)だ。このペスト菌はノミやネズミを媒介に感染を広げていた。感染すると高熱や頭痛に見舞われ、精神的錯乱状態になり、そして三日後には「黒い斑点」が身体に浮かび上がり死亡すると言われている。当時、このペストにより東ローマ帝国の人口の4割が死亡したと言われており、一説ではこの事が原因でローマ帝国が崩壊したとも言われている。
その後ペストは一度沈静化しますが、1300年代辺りに新たにヨーロッパで流行し始める。ちなみに、この時のペスト菌がどこから入って来たのかは不明。ただ、中国説、中央アジア説などが有名で、最も有力なのが当時ヨーロッパに攻めていたモンゴルのネズミ(クマネズミ)が感染源とされる説となる。
このペストという病には2種類存在する。一つ目が、東ローマ帝国で蔓延したノミやネズミを媒体にして人間に感染する「腺ペスト」と呼ばれるもの。そして二つ目が、これが進化して「肺ペスト」と呼ばれるものになった。肺ペストになった事によって、人から人への感染が確認されるようになったのだ。
そして、この肺ペストが猛威を振るったのがヨーロッパとなる。ペストはヨーロッパ中に広がり、当時のヨーロッパの人口の30%~60%(約2500万人~3000万人)の人が死亡したと言われている。この感染力は強力で、当時は遺体の処理が追いつかない程であった。その為、当たり前のように街のいたるところに黒い斑点の死体が転がっていたという。
このペストの流行によって当時のヨーロッパでは労働者不足が深刻化、聖職者(キリスト教)達でさえもが逃げ出していたという。ちなみに、この人手不足により、この辺りから人手が掛からない「ぶどう」が育てられるようになったとも言われている。
ペストはその後もヨーロッパに根付き、1700年頃まで10年~15年周期で感染爆発を繰り返していた。ただ1700年頃には住環境が充実し始め、疾病対策が強化されていた。そしてようやく抗生物質による治療の効果が出始め、この辺りでペストは減少傾向となった。数百年の間ペストに苦しめられたヨーロッパであったが、結局、ペストを根絶する事はできなかった。治療法は確立されているが、現在でも世界では年間約2000人がこのペストに感染しているという。
現代まで続く感染症の歴史
その後も時代背景や国を問わず、人類はこれまでに数多くの感染症に見舞われてきた。これは日本の歴史を振り返ってみても同じことが言える。そしてこのような感染症は今もなお人類を苦しめている。
2009年~2012年に世界で大流行した「新型インフルエンザ」は記憶に新しい。日本の入院率、死亡率は主要国と比べると低かったが、WHO(世界保機関)の発表によると、この年世界では新型インフルエンザの影響で約28万人が亡くなっている。
当時アメリカでは甚大な被害を及ぼす災害時に出される「国家非常事態宣言」が発出されていた。もちろん日本でも様々な対策が行われていたが「非常事態宣言」の発出とはならなかった。確かに、日本は入院率、死亡率が他国と比べると低かったという事もあるが、理由はそれだけではない。
実は当時の日本ではこの「非常事態宣言」というものの明確な定義が存在していなかった。つまり、当時の日本ではどれだけ感染爆発が起きようと、法や制度上規制を行う事ができなかったのだ。当時の感染症法的にも「外出自粛要請」や「休業要請」といったもができなかった。
ただ、この出来事がきっかけとなり2012年に法や制度の見直しが行われた。そして「新型インフルエンザ等対策特別処置法」というものが施工された。これが現在の感染症対策の根幹にあり、現在も適応されている。2012年までこのような制度が整っていなかった事には驚きだが、逆を言えば、これは日本が感染症に対してこれまであまり恐怖を抱いていなかった事になる。実際、日本でも700年頃から周期的に感染症が蔓延していたと言われているが、日本は島国という事もあり、海外ほど大きな被害は出ていなかったと言われている。
現代の感染症と未来
このような感染症の歴史を繰り返し人類は今に至る。つまり、これまでに人類は感染症を世の中から根絶する事はできていない。むしろ、人類は現代でも新しい感染症に苦しめられている。
昔と大きく違うのはやはり感染の規模である。現代は技術の進歩によって人の移動や人口密度がきわめて高くなっている為、感染速度も昔とは比べものにならない。これまでの感染症は医療が成長した事によってなんとか抑えられてはいるが、新たに未知の感染症が現れれば当然世の中は大パニックになるだろう。
とは言っても、現在では医療も進歩し、これまでの経験からも多くの学びがある。今後どうなるかはわからないが、いつの日か人類が感染症を根絶する日も訪れるかもしれない。
まとめ
これまでに甚大な被害をもたらした感染症ですが、悪い事ばかりではありません。【古代医療と現代医療の歴史】の記事でも紹介しましたが、こういった事がきっかけで現代の医療や化学というものがあるのです。また同時に、このような感染症によって大きな被害を受けると、人間は人や命を大切にする傾向が強くなります。そして国や行政は法律や制度を強化します。これらの事が現代人にとっていい事かはわかりませんが、少なくとも昔よりは苦しむ人が少なくなっているのは事実ではないでしょうか。
オカルト的にまとめると、こういった感染症が「兵器」として利用されてきたのも事実です。感染症だけの歴史を見ると気がつかないが、視点を変えて見ると裏では大きな争いが起こっていたりする。もしかすると、感染症が広がったのには何か政治的な理由があったのかもしれない。
これは噂の域を出ないが、実際ローマ帝国では他国との交易が原因で感染症が蔓延したと言われている。ローマ帝国は感染症によって崩壊したと言われているが、そう考えると強ち感染症が兵器というのも間違いではないのかもしれない。また、ヨーロッパでのペスト時にはなぜか「ユダヤ人」が槍玉に挙げられ、裏で大量虐殺が行われている。歴史は繰り返すと言うが、果たして…